パワー・ハラスメント
~パワーハラスメントがあったと判断できないが、
事態が悪化する可能性がある例~
上司に質問をしても「なぜわからないのか」と言われ、
「頭が悪い」、「朝10時に今日はもう帰ってもいい」などの
罵声をこの半年毎日のように浴びせられているという相談が
相談窓口にありました。
相談にあたっては、外に声が漏れない部屋を用意して、
相談担当者男女2名が、落ち着いた気持ちで話してもらえる
ように配慮しました。
相談者が「会社としての対応」を希望したために、行為者に
事実確認を行うこととしました。
事実確認にあたっては、相談担当者1名と管理職への教育などを
担当している人事部の副部長の2名で対応することとしました。
また、行為者には、秘密厳守であることと報復などがあっては
ならないことを最初に告げて事実確認を開始しました。
行為者は、大きな声で叱ったり、指導したりした事実は認めたものの、
それがパワハラに該当する罵声や罵倒にあたる言動であるという
認識は持っていませんでした。
そのため、相談者の了解を得た上で、職場の第三者にも事実確認を
行いましたが、外勤の多い営業職の従業員がほとんどだったため、
事実関係をはっきりと確認できませんでした。
そこで、パワハラがあったと判断できないけれども、このままでは
事態が悪化する可能性があるとして、部下に指導する際には、
怒鳴ったり、人格を攻撃することは望ましくないこと、
部下の仕事の行い方にどのような問題があったのかを具体的に指摘し、
改善することが上司の役割であること、について行為者と繰り返し
話し合い、理解を促しました。
複数回の話し合いの結果、行為者は次第に言動に変化がみられる
ようになっていきました。
厚生労働省~あかるい職場応援団~
相談対応のうまくいった例
~女性従業員の悩みをうまく聞き出せた例~
ある日、ハラスメント相談窓口に女性従業員より相談
の電話がありました。
「どのようなことでお困りでしょうか」と聞いても、
言い出し辛いような様子が伺えたため、同性である女性の
相談担当者に電話を引き継ぎました。
当初、相談者は何から話せば良いのか困った様子で言い淀んで
いたので、「間」を大切にしつつ、お互いの信頼関係の形成を
意識しながら傾聴していくことで、徐々に警戒心が説かれ、
相談内容に入ることができました。
女性従業員は、現在、取引先のお客様先に出向しており、
出向にあたり上司から大事な取引先であり、上手くやるように
と念を押されていました。
出向先のグループリーダから飲み会の誘いを受けたものの、
家庭の用事があったために参加を断ったところ、翌日から
当該リーダや数名の従業員に挨拶をしても無視されるように
なったほか、書類のコピー等、簡単な作業しか仕事を任され
なくなりました。
出向元の上司から念を押されていることもあり、事態の解消を
自分から言い出すことができずに、3か月経過したところでした。
一通り相談者の状況を確認したところで、すでに1時間を経過
していたため、今後の対応については、後日、改めて電話で
相談を受けることとしました。
後日、相談者は会社としての対応(事実調査など)を希望される
とのことでしたので、今後の会社としての対応プロセスを確認し、
改めて担当者から連絡することとしました。
相談窓口担当者は、相談内容を相談管理票に記載するとともに、
「会社対応の希望ありの事案」として、ハラスメント調査の
責任部門にあたる人事部への引き継ぎのため、報告を行いました。
厚生労働省~あかるい職場応援団~
相談対応のうまくいかなかった例(2)
~相談者に了解を得ずに事実確認をしてしまった例~
ハラスメント相談窓口に、管理職の男性が青い顔をして訪ねてきました。
当該男性管理職は、部下3人が業務時間中にひそひそと自分の悪口を
話していることを小耳にはさみ、自分が仕事を頼むと
「今、必要ですか?今じゃなくてもいいんじゃないですか」と言ったり、
舌打ちをしたりもします。
外出先から電話をしても、業務が忙しいことを理由に電話口に
でないことさえあるということでした。
相談担当者は、急ぎ対応した方が良いと考え、相談者に了解を得る
ことなく、該当の部下3人に事実確認を行ったところ、あっという間に
職場中に当該管理職が相談に行ったことが知られてしまい、
問題がこじれてしまいました。
【事実関係の確認が必要!!】
- 相談者の了解を得た上で、行為者や第三者に事実確認を行いましょう。
- 行為者に対して事実確認を行う際には、中立的な立場で行為者の話を聴きましょう。また、相談者の認識に誤解があった場合にも、報復などは厳禁であることを伝えましょう。
- 相談者と相手の意見が一致しない場合には、同席者や目撃者は、同様のパワーハラスメントを受けている者に事実関係の調査を行います。
- 第三者に話を聞くことで、当該問題が外部に漏れやすくなるので、第三者にも守秘義務について十分理解してもらい、事実確認を行う人数は、できる限り絞りましょう。
- 相談者、行為者、第三者の意見が一致するとは限りません。それぞれの主張を合理的に判断する情報と考えるようにしましょう。
厚生労働省~あかるい職場応援団~
相談対応のうまくいかなかった例(1)
~相談窓口担当者が勝手に判断してしまった例~
ある日、ハラスメント相談窓口に男性従業員より
匿名で相談の電話がありました。
当該従業員は、女性上司が子どもの学校の成績、共働きの
妻の年収、休日の過ごし方などのプライベートについて、
根ほり葉ほり聞いてくることが苦痛であるということでした。
そのため、女性上司に悪気はなく、業務を指示するにあたり、
部下のプライベートな事情や生活状況等を考慮することを
目的で聞いているのだから、パワハラにはあたらないと話した
ところ、相談者は怒った様子で「じゃあ、もういいです。」
と告げて、電話が切られてしまいました。
【事実関係の確認が必要!!】
- 相談者の了解を得た上で、行為者や第三者に事実確認を行いましょう。
- 行為者に対して事実確認を行う際には、中立的な立場で行為者の話を聴きましょう。また、相談者の認識に誤解があった場合にも、報復などは厳禁であることを伝えましょう。
- 相談者と相手の意見が一致しない場合には、同席者や目撃者は、同様のパワーハラスメントを受けている者に事実関係の調査を行います。
- 第三者に話を聞くことで、当該問題が外部に漏れやすくなるので、第三者にも守秘義務について十分理解してもらい、事実確認を行う人数は、できる限り絞りましょう。
- 相談者、行為者、第三者の意見が一致するとは限りません。それぞれの主張を合理的に判断する情報と考えるようにしましょう。
厚生労働省~あかるい職場応援団~
■ 相談窓口の設置
- 従業員が相談しやすい相談窓口を設置し、できるだけ初期の段階で気軽に相談できるしくみを作りましょう。
- 相談窓口には、内部相談窓口と外部相談窓口があります。それぞれの窓口がパワーハラスメントを含めたさまざまな相談に対応できると、相談しやすくなります。
【内部相談窓口の設置(例)】
- 管理職や従業員をパワーハラスメント相談員として選任して相談対応
- 人事労務担当部門
- コンプライアンス担当部門/監査部門/人権(啓発)部門/法務部門
- 社内の診察機関、産業医、カウンセラー
- 労働組合
【外部相談窓口の設置(例)】
- 弁護士や社会保険労務士の事務所
- ハラスメント対策のコンサルティング会社
- メンタルヘルス、健康相談、ハラスメントなど相談窓口の代行を専門に行っている企業
厚生労働省~あかるい職場応援団~
周知目的
- パワーハラスメントの防止に向け、組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口やその他の取組について周知することが必要です。この周知は、単にポスターなどで伝えるだけではなく、会社が本気で取り組んでいることや、その取組内容を理解してもらえるものでなければなりません。就業規則のように従業員の給料や休暇など待遇にかかわるものであれば、掲示やパソコンなどにデータとして開示し、自らが必要に応じ見ることができるようにする方法もありますが、パワーハラスメントの防止のためには、より積極的、能動的な周知が必要です。
- 周知を確実なものにするためには、各種取組を目に見える形で実施し、従業員に、会社が真剣に取り組んでいることを実感してもらうことが必要です。そのためにも、トップのメッセージやルール、パワーハラスメント防止対策の取組意義などを従業員にしっかり伝え、理解してもらうことが重要です。また、周知を確実なものにするための手段として、「3.4.教育する」で示した研修などの教育も効果的と言えます。
厚生労働省~あかるい職場応援団~
・教育のための研修は、可能な限り全員が受講し、かつ定期的に
実施することが重要です。中途入社の従業員にも入社時に研修や
説明を行うなど、漏れなく、全員が受講できるようにしましょう。
・管理監督者と一般従業員に分けた階層別研修の実施が効果的です。
ただし、企業規模が小さいなどの場合は、管理監督者と一般従業員が
一緒に研修を受講してもよいでしょう。
・研修内容には、トップのメッセージ内容を含めるとともに、
会社のルールの内容、取組の内容や具体的な事例を加えると効果的です。
厚生労働省~あかるい職場応援団~
・労使一体で取組を進めるために、労働協約や労使協定などで
ルールを明確化することが効果的です。
・罰則規定の適用条件や処分内容、また、相談者の不利益な取扱い
の禁止などを明確に定めましょう。
・ルールは、従業員にとって分かりやすく、できる限り具体的
な内容としましょう。
・就業規則などにルールを盛り込む場合には、事前に労働組合や
労働者の代表などの意見を聴くことが求められています。
就業規則の変更の目的や意義を十分伝え、意見交換した上で
ルールを決めましょう。
・就業規則を変更した場合は、その内容の周知が義務付けられ
ています。従業員への説明会や文書の配布なども忘れず実施しましょう。
~厚生労働省~あかるい職場応援団HPより