面接で聞いてはいけないこと
面接においては、質問を行き当たりばったりでするのではなく、すべての応募者に
公平な対応ができるように、あらかじめ質問事項を決めておきます。
その際、「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項」などの就職差別に
つながるおそれのある事項を避け、応募者が「職務遂行のために必要な適性・能力」
をどの程度有するかを評価するために必要な事項を質問するようにします。
就職差別につながるおそれのある事項は、それを質問されたくない応募者に
とってみれば、精神的な圧迫や苦痛を受けたり、そのために心理的に動揺し
面接において実力を発揮できなかったりする場合があります。
そのような応募者の回答ぶりと質問に答えやすい応募者の回答ぶりを比較して、
採否決定の判断資料とするのは公平とはいえません。
このようなことから、質問事項や質問を行う上での留意点について、面接マニュアル
などに整理しておいたり事前に打ち合わせをすることなどにより、面接担当者全員で
確認・徹底しましょう。
ただし、面接というものは、質問事項をあらかじめ決めておいたとしても、しばしば、
話の流れの中で様々な展開を見せる流動的なものです。そのため、話の流れの中で
うっかり尋ねた事柄や、応募者の気持ちをやわらげようと聞いた事柄の中にも、
就職差別につながるおそれのある事項が含まれたり、応募者を傷つけたり人権を
侵す場合もあります。
このため、公正採用選考の基本的な考え方を十分理解しておくことにより、常に
臨機応変に適切な対応ができるようにしておくことが重要です。
~厚生労働省資料より~
色覚検査において異常と判別された方の大半は、支障なく業務を行うことが
可能であることが明らかになってきております。
しかしながら、このような方が業務に特別の支障がない場合であっても、
事業主が採用を制限する事例も見受けられることから、労働安全衛生規則等
の改正(平成13 年10 月)により、「雇入時の健康診断」の診断項目としての
色覚検査が廃止されました。
従業員を雇い入れる際には、「色覚異常は不可」などの求人条件をつける
のではなく、色を使う仕事の内容を詳細に記述するようにするとともに、
採用選考時において、色覚検査を含む「健康診断」を行うことについては、
職務内容との関連でその必要性を慎重に検討し、就職差別につながらない
よう注意してください。
厚生労働省~公正な採用選考をめざして~
職業安定法では、労働者の募集業務等の目的の達成に必要な範囲内で、
募集に応じて労働者になろうとする者等の個人情報を収集、保管、使用
しなければならない旨規定しています。
また、併せて、法に基づく指針が公表され、原則として収集してはならない
個人情報等を規定しています。
次の個人情報の収集は原則として認められません。
● 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の
原因となるおそれのある事項
・家族の職業、収入、本人の資産等の情報
・容姿、スリーサイズ等差別的評価につながる情報
● 思想及び信条
・人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
● 労働組合への加入状況
・労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報
個人情報の収集は、本人から直接又は本人の同意の下で収集することが原則です。
違反したときは、
● 違反行為をした場合は、職業安定法に基づく改善命令を発出する場合があります。
● 改善命令に違反した場合は、罰則(6 ケ月以下の懲役又は30 万円以下の罰金)が
科せられる場合もあります。
厚生労働省~公正な採用選考をめざして~より
【就職差別につながるおそれがある項目】
「宗教」に関すること
「支持政党」に関すること
「人生観・生活信条など」に関すること
「尊敬する人物」に関すること
「思想」に関すること
「労働組合・学生運動など社会運動」に関すること
「購読新聞・雑誌・愛読書など」に関すること
思想信条にかかわることを採否の判断基準にすることは、憲法上の
「思想の自由」「信教の自由」などの規定の精神に反することになります。
思想信条に関わることは、憲法に保証された本来事由であるべき事項であり、
それを採用選考に持ち込まないようすることが必要です。
厚生労働省~公正な採用選考をめざして~より
【就職差別につながるおそれがある項目】
「家族」に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
「家族」の職業(有無・職種・勤務先など)・続柄(家族構成を含む)・健康・地位・
学歴・収入・資産などを応募用紙や面接などで把握しようとする事例が
見受けられますが、それらの事項は、本人の適性・能力に関係のないことです。
そもそも、両親のいる家庭であるかとか、親などの家族がどんな仕事に就いているか、
会社の中でどんな役職か、どれほどお金持ちかなどということなどによって、
本人の就職が左右されてよいはずがありません。
また、親などの家族の状況から本人の適性・能力などを推しはかろうとする考え方も、
家柄を重んじるなどの前近代的な因習に基づく多くの予断と偏見が作用したもの
ということができます。
「面接において家族について尋ねたのは、応募者をリラックスさせるために、
答えやすい身近な話題として出しただけであり、何かを差別しようとするつもりは
なかった」という場合もあります。
しかし、ひとたび尋ねて把握してしまえば、それは知らないうちに偏見や予断を
招き、本人に対する評価・見方にフィルターがかかります。
はじめは差別するつもりはなかったということでも、結果としては、把握したことが
採否決定に影響を与え、就職差別につながるおそれがあるのです。
また、家族について尋ねるということは、例えば家族の離死別・失業など、
本人に責任のないそれぞれの家族のさまざまな事情に立ち入ることにもなり、
もし応募者がそれらの事情を尋ねられたくないと思っていたならば、
本人を傷つけたり、動揺させて面接時に実力を発揮できなくさせ、結果として
その人を排除してしまうことにもなりかねません。
家族に関することは、尋ねる必要がないばかりか、本人自身の適性と能力を
公平かつ客観的に評価するためにあえて尋ねないようにする考え方が必要です。
厚生労働省~公正な採用選考をめざして~より
【就職差別につながるおそれがある項目】
「本籍・出生地」に関すること
人を雇う際に「戸籍謄(抄)本の提出」を求めるなどによって「本籍」を調べる習慣は、
我が国の資本主義発達段階の初期において、身元を確認するための手段として
生まれたものだと言われています。
その後この習慣は踏襲され続け、今となっては何のためにこれを求めるのか
明確でないのに従来からの慣行として事務的に求めている場合があります。
しかしながら、この本籍・戸籍謄(抄)本というものは、同和関係者であることなどを
理由とした差別に用いられたり偏見を招くおそれのあるものであるということや、
それが把握されることによって多くの人々を不安にさせているということについて、
深く認識する必要があります。
「本籍によって差別するつもりはなく、特に必要性はないけれども事務的に
戸籍謄(抄)本の提出を求めた」ではすまされないことについてご理解ください。
本籍が記載された「住民票(写し)」も、考え方は「戸籍謄(抄)本」と同様です。
また、外国人(在日韓国・朝鮮人を含む)の場合、採用選考段階において、
応募者から「在留カード」や「特別永住者証明書」などを提示させることは、
応募機会が不当に失われたり、国籍など適正と能力に関係がない事項を
把握することにより、採否決定に偏見が入り込むおそれがあります。
就労資格の確認については、採用選考時は口頭による確認とし、
採用内定後に「在留カード」の提示を求めるという配慮が求められます。
※特別永住者は就労活動に制限はなく、また、外国人雇用状況の届出の
対象にはなりません。
なお、応募用紙の「本籍」欄については、「(中卒用)職業相談票(乙)」
「全国高等学校統一応募用紙」は平成8 年4 月より、
また「JIS 規格の様式例に基づいた履歴書」は平成10 年7 月より
削除されています。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること
(注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)
(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施
(注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施