採用内定後において、単に従来からの慣行であるなどの理由で、採用内定者の

個人情報に係る各種書類を画一的に提出させる事例が見受けられます。

確かに、従業員の居住場所や緊急連絡先の確認、社会保険・税金などの手続き、

通勤手当・家族手当・扶養手当・慶弔金などの支給条件の確認など、本人や家族の

住所等を確認したり、その関係書類を提出させることに、雇用管理上の合理的な

必要性が認められる場合もあると思われますが、「戸籍謄(抄)本」を求めて本籍を

把握することなどについては、通常、合理的な必要性があるとは考えられません。

労働基準法施行規則第53 条第1 項に規定される労働者名簿の記入事項についても、

「本籍」が削除されています(平成9 年4 月1 日より)。

把握することに合理性が認められる情報を把握する場合であっても、例えば、本籍欄を含む

「住民票」ではなくて「住民票記載事項証明書」(注)などを提出させることで足りるものと

考えられますし、それも入社時に一律に提出させるのではなく、必要となった場合に本人の

同意を得て提出させ、必要な内容の確認後は本人に返却するなどの配慮を行うことが

望ましいと考えられます。

採用内定者の個人情報の取扱いについては、従業員の基本的人権を尊重し差別のない

職場を作るため、『公正な採用選考』の考え方に準じて対応することが求められるといえます。

個人情報保護法(平成15 年5 月施行)においても、個人情報の適切な取扱いが求められて

いるところであり、その観点からも、採用内定者の個人情報を、雇用管理のために必要な範囲を

超えて把握収集したり保管などをしないようにすることが求められます。

(注)「住民票記載事項証明書」とは、本人等の請求に基づき、氏名・住所・生年月日などの
所定事項が住民票に記載されていることを、市・区役所や町村役場が証明する書類。
請求人が作成した書面に役所・役場が証明をする場合と、役所・役場側が定めた様式の
証明書が発行される場合がある。

~厚生労働省資料より~

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